気持ちを伝え合う技術(後編)~自己主張する上でのアプローチについて~
更新日時:
はじめに
心理学者に学ぶ気持ちを伝え合う技術を一読して前回の記事では、現代日本の会話の難しさについてまとめました。
本に関しては以下のリンクで確認いただけます。
間柄を重視し、関係性の中の自己を見出して生きる日本社会に適応するためには良好な関係を作り上げながら自己主張を織り込んで行くコミュニケーション能力が求められる
今回は、そのコミュニケーションを取るためのアプローチにはどんなものがあるのかについてまとめていきます。
なお、個人のアウトプットとして残しているため、文章ではなく主観的に箇条書きで書かせていただいたこと、ご了承ください。
自己主張する上での感情的なアプローチ
自己主張が下手な場合
- 不適切な自己主張の仕方
- 相手から悪く思われなくない気持ちが強くtえ、自己主張がほとんどできない
- 相手の気持ちや反応などに配慮しない
ヒント
アサーション・トレーニング
- 自分を抑えすぎてうまく自己主張できない人のために、自己主張の仕方を体得させるトレーニング
感情のコントロールが下手な場合
- 感情的なタイプの人が否定的感情を適切にコントロールできないと
- 愚痴っぽくなる
- 攻撃的になる
ヒント
ストレス・コーピング
- ストレスを適度に吐き出すための対処方法
普段からできる情緒的なコミュニケーション方法
間柄を壊さない話し方
日本的な特徴
- 日本的な関係において、間柄が崩壊した場合、お互いの人間性を尊重するような関係は期待できなくなる
- よそ者に対しては何の配慮もする必要はないということになり、何でもありの世界になる
プライドを傷つけない
- 相手のプライドを傷つけないように配慮しながら自己主張する
- とくに自分のほうが優位の立場になっている場合に要注意
- 正論を畳みかけるように披露して、対立/対抗意見を徹底的に粉砕するような言い方をしない
- 議論には勝つかもしれないが、相手のプライドはダメージを受けることになる
- プライドを傷つけられた人の反応は非常に恐ろしい
- なんとかしてプライドを回復しようとする心理が働き、その防衛本能として反撃がくることもある
- こうした展開を避けるには、議論で自分のほうが優勢になった時、相手の言い分の余地を残すような配慮をすることを忘れない
- けっして相手を追い詰めない
適切な距離感の自己開示
精神的な健康条件
- 自己開示できる相手が一人でもいること
- 自己開示せずに自分の中に溜め込んでは不健康になる
- また、自己開示しない人物は他人から人を信用していないかのような印象を与える
ヒント
- 自由連想法、クライエント中心療法
- 心のなかに溜め込んだものを吐き出させる
- 解決策が与えられたわけではなくても、スッキリした気持ちで楽になる
- カタルシス効果が得られるとも言われる
- 自己開示はカタルシス効果もあると同時に、相手から行為を引き出して心理適距離を縮める効果がある
- 不自然な話題でない限り、相手にプライベートの話を持ち出すことで堅苦しい関係性から少しずつ心理的な距離が縮められる
- 相手からしても自分に対して心を開いてくれる人には好感がもてるし、気を許して自己開示しやすくなる
- 個人のためだけでなくとも、プライベートを充実させることで会話する時に損はない
- 注意点として、知り合って間もない頃の早すぎる深い自己開示は性格的に未熟だと判断されやすい
- 自分の問題を自分で背負うことができないタイプで、精神的に弱く不安定な人とみなされる
- 深い自己開示とは、人生観・価値観・自分の生い立ち・私生活の悩みなどなどを指す
失敗談で距離感を縮める
- 人には自己評価を高めたい心理がある
- より高い自己評価をもちたいため、人との比較で上下する性質がある
- しかし、自分をよく見せたいと思って自慢話をするのは逆効果をもたらすことがある
- 自慢話によって相手は自己評価を低下させたり、コンプレックスを刺激されたりする
- 自分の失敗談をすることで相手の自己評価を傷つけることなく、気持ちに余裕をもたらす事ができる
- 自分の弱点を無理に隠さず、見せることで親しみやすさを生む
相談で肯定的評価と信頼を得る
- 「相談する」という行為は相手に対する肯定的な評価と信頼の意味合いが含まれる
- 自分の性格がどんなタイプなのかはエゴグラム(性格診断テストの1つ)から確認してみるのも良いかもしれない
- 遠慮は心理的距離を広げる
自己主張する上での理性的なアプローチ
言いたいことの流れを作る
- 相手の理性的な部分へ有効に働きかけるには理屈を伝える自己主張が要る
- そのために、伝えたい論旨に単純明快な流れを作る
- 言いたいことを端的に表すいくつかの短い文をまとめて、論理的な流れを作って並べていくトレーニングで鍛えられる
相手が本音を出せる聴き手になる
本音が出せない不安
- 人によって、楽しい話・軽い話をすることはできても自分の中の真面目な部分・ちょっと内向きで暗い部分を出すことができず、物足りなさを感じるケースがある
- 多くの人は、うっかり自分を出して、相手から退かれる反応があると自分が傷ついてしまうことを恐れる
- しかし、日常が弱音を吐けないところになると、それが解消できず心の中で蓄積されてしまう
- 日本の社会においても従業員にとって第2の家族のような存在だった会社が今では単に収入を得るためだけの職場に変わっている
- その結果、人と人が切り離され、不安や寂しさに苛まれる人たちが増えてきた
自分のことを素直に語るのを躊躇させる心理要因
- 現在の関係のバランスを崩すことへの不安
- 話したことを他人に漏らされたら嫌だと思い、楽しい関係でいたいから深入りをしない
- 深い相互理解に対する否定的な感情
- 自分の考えや気持ちは誰にもわかってもらえないから、人に話してもしょうがないと思い、お互いに相手のことをことを深く知る必要はないと考える
- 相手の反応に対する不安
- 意見の対立を避けたいとか、相手も同じことを考えているかどうか分からない不安とかがここに当たる
相手にやってあげられること
- 相手と距離を縮めたいなら、その相手に取っての良い聴き手になることも1つの手
- 良い聴き手を前にすると、安心して自分の内面を振り返りつつ、自己の思いを語ることができる
- その人にとって自分の思いが語れる場になってあげる
- ある意味、カウンセリングに近いかも知れない
日々の経験と自分は案外曖昧
日々の経験は意識しないと曖昧になる
- 日々の経験は曖昧なもので、はっきりと意識化して言語化するのが実は難しい
- 自己の経験が曖昧なまま、通りすぎてしまうことが多い
- アイデンティティが拡散し、何に満足していないのかが分からない状態になる
- 「自分自身がどうしたいのか分からない」、「何を求めているのかが分からない」ことになる
自分について語ることで得られる効用
- 自己明確化機能
- 人に語ることによって、まだ形を成していない気持ちを何らかの明確な形にすることができる
- つまり、まだ意味を確定されていない、解釈する前の経験に対して、語れる意味を与えていくことができる
- カタルシス機能
- 溜め込んでいた経験を語る事によって、その記憶と結びついた情動が発散される
積極的傾聴で相手の行動に変化をもたらす
その人なりの論理
- 話している相手はその人なりの理屈や行動原理がある
- なので、自分が考えていた通りに行動してくれると思ってはいけない
- 人を変えるには力ずくでなく、相手の懐に入り込む必要がある
- 自分の話を聴いてくれない人の言葉ははねのけても、自分の話にじっくり耳を傾けてくれた人の言葉はスッと気持ちに染み込む
- 自分を受け入れてくれる人には素直になれる
傾聴しながら相手にする2種類の質問と効果
- 閉ざされた質問
- 回答の仕方が大きく方向づけられて、自由度が低い
- YesかNoで答えられる
- 表層的な状況を把握する時に使える
- 開かれた質問
- 回答の仕方が決まっていなく、自由度が高い
- 答える人自身の振り返りや考え込んだ結果のことで答えられる
- 気になることに焦点づけた話を持ち出す時に使える
- 相手がどういう思考スタイルを持っているかの見当がつく
最終的な判断は本人しか下せない
- どうしたらよいかの答えは、本人自身の中から湧き出てくるもの
- あらゆる状況に一番通じているのは本人なので、他人から与えられた答えは心に根付かなず、なかなか行動にはつながらない
- なので、本人が悩んでいることに対しては話を聴いてあげることが一番の答え
今回のまとめ
本の内容を整理して思ったのは普段からやっていることがいくつかあったことでした。
自分が伝えたいことを相手が誤解しないように伝えようとした結果、「間柄を壊さない話し方」で書いた内容のアプローチができていました。
転職してからはじめたことではありますが、毎日の業務で得られたことをtwitterにまとめて見たら「自分について語ることで得られる効用」書いた内容の効果が得られていました。
ちなみに、そのtwitterは以下です。
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
— カモ@ブログ書いていくぞい (@camomile_cafe) May 14, 2020
> 転職して100日後に孵化するカモ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y
また、今後取り入れていきたいキーワードとして以下の収穫がありました。
- アサーション・トレーニング
- ストレス・コーピング
- 自由連想法
- 自己明確化
- 閉ざされた・開かれた質問
今回の読書で日本語を使ったコミュニケーションの難しさは単に言語の難しさだけでなく、その言語を使っている文化的な面の難しさが含まれていることを改めて感じました。
また、本の中で紹介された理性的・感情的なアプローチは他人とコミュニケーションをする時だけでなく、自分について知るためのきっかけになる要素もあったので、今後self helpしていくためのヒントが得られました。
最後に、前編/後編と分けた書評を読んでいただきありがとうございました。
今回のような書評を他の機会でもやっていきたいと思います。
コメントする