OSS翻訳の経験談とこれから翻訳活動をやる人に向けてのTips

更新日時: July 04, 2020

はじめに

OSS活動に興味を持っていたものの、何かのきっかけがなかったので今までやって来ませんでした。
理由としてはなんとなくハードルを高いと感じるとか、やってもどんなメリットがあるのかと疑問を感じるとかで躊躇しました。
そう思っていた自分ですが、先日以下の記事で紹介しましたOSSのアプリで表示される部分をまるごと翻訳しました。


今回はOSSの翻訳活動をしたきっかけと実際やってみた後の感想、そしてOSS翻訳に興味がある方のためのTipsについて書いていきます。
また、翻訳をしたリポジトリは以下となります。



翻訳をするきっかけ

今回、翻訳する上でいくつかきっかけとなる出来事が重なりました。
この記事で深くは触れませんが、気になる方は以下の記事から読んでいただけますと幸いです。



今回の翻訳のやり方

今回は業務や個人の開発でも使っている技術の勉強を兼ねてOSSの翻訳をしました。
そのため、基本的な方針とどこまでやるかに関しては以下のように決めて進めました。

  • 1週間、一人でデモアプリのテキストを翻訳する
  • なんとなく読める状態を先に作る
  • PRは必ず出す

1週間、一人でデモアプリのテキストを翻訳する

翻訳経験があることから調子にのって「1つのリポジトリのテキストを自分で翻訳してみよう」という大きな目標を持ちました。

確かに勉強を兼ねて翻訳すること自体は良かったと思います。
業務中で使うことになった技術を使うために必要な記述方法や注意点を自ら確認する機会となったため、実装のときもその分楽でした。

ただ、一人で翻訳するには量が多かったのが正直な感想でした。
1ページに平均350単語で全15ページ分の5250単語くらいを翻訳しました。
今となっては、1週間で全部をやるにあたってバッファをおかずに進めたわけでもあったため、タイムマネジメントの側面からしたらちょっと失敗したように思いました。

なんとなく読める状態を先に作る

以前、ゲームのテキストを翻訳したときに得られたことで、初稿を起こすときは必ず完璧な状態にしないという経験がありました。

理由はシンプルで、決められた時間内にある程度のクォリティを担保するためには雑でもいいから最初のものを早く仕上げて徐々に完成度を高めたほうが結果的には質のいい翻訳になりやすいからです。

上記でも書きましたが、今回は翻訳を1週間で仕上げる条件がありました。
そこで最初から室の高い翻訳を求めて、丁寧に訳すると後々締めが近づいて来るにつれてプレッシャーを感じてしまいます。

また、今回は一人で翻訳をするわけなので、翻訳を終えてからレビューをするのも自分でやることになります。
そのため、レビュー時間も込みで1週間であり、なる早で仕上げて徐々に完成形を作るようなやり方が求められました。

PRを必ず出す

簡単に言うと、逃げ場を作らないための方針として掲げた目標でした。

ここまで目標を決めておかないと、せっかく翻訳自体はしたものの世の中に見せる機会がなく、どこかで自分に甘えて「途中までやってたけど、諦める」みたいな状態になったと思います。
なので、この目標はあくまでも自分自身との約束として決めたことです。

これとは別の問題としてPRを出すまでのやり方や作法のことで苦労もしましたが、最終的に以下の記事を参考にしてなんとかOSSのPRを出すことが出来ました。


そして結果的に、以下のようにOSSへPRが出せました。



これからOSSの翻訳活動をやる人のためのTips

ここからは実際にOSSの翻訳活動をする上でハードルをさげるためにやってみるといいことや注意することについてまとめていきます。

一度に完璧な翻訳を求めない

「初稿を起こすときは必ず完璧な状態にしない」とはまた別の話になりますが、PRを送るときに完璧な翻訳を目指す必要はありません。
正しく訳そう]**と思って気を張って取りかかると翻訳しているうちに「本当にこの翻訳でいいのか」と思いはじめ、翻訳すること自体にプレッシャーを感じかねます。 なので、もう少し気軽に考えて翻訳に取りかかってみましょう。
OSSを翻訳して公開した後に自分では気づかなかったことを、他人が「あれ?」と疑問に思うことがあれば、その人からきっとプルリクエストが来たり、issueが立てられたりします。
そうすると、どんな理由で自分の翻訳に疑問を感じたのかがフォードバックされるので、その都度改善していけばだんだん翻訳の質は高められます。
そして何より、そのような文化を信じることでOSSの翻訳に対するハードルがだんだん下がっていきます。

翻訳の量が多かったら難易度ごとに分けてissue化する

いざ翻訳をしようとした時、ドキュメントの量が多いOSSだと翻訳一つやるだけでたいへん労力がかかります。
ドキュメント翻訳活動が活発なコミュニティーならメンテナーがドキュメントを種類ごとに分けて翻訳の進捗管理や全体の総括をするケースがあります。
ただ、これから翻訳活動を行うコミュニティーやメンテナーがまだ決まっていないOSSのコミュニティーの場合も中にはあります。
その時は、自分からドキュメント全体に一度目を通して技術的難易度と翻訳難易度を自分で決めてissue化してみましょう。
issueをラベルで分けてみることで大体の難易度は決められるかと思います。
分け方に関しては以下を参考にするのもいいでしょう。


機械翻訳を使う場合、ライセンス違反していないかを定期的に確かめてみる

今のところGoogle翻訳やDeepLのような機械翻訳で有名なサービスの翻訳結果を使うことでほとんど問題はないです。
しかし、翻訳結果を使うことはそのサービスの権利問題やライセンスに触れることに繋がる可能性があります。
以下の記事にも載っていますが、例えばExcite翻訳を使う場合、利用規約に明示されている範囲を超えた利用をしたら違反となるケースがあります。



とはいえ翻訳のペースを上げるために、機械翻訳を積極的に利用するとか、OSSに対する貢献のハードルを下げるために翻訳サービスを利用するのはありだと思いますので、気軽に利用できる分、使うサービスの利用規約も定期的に確認しましょう。


最後に

OSSの翻訳活動を一人でやってみたと感想とこれから翻訳をやってみる方への自分なりのTipsをまとめました。

翻訳をすることで、読んでくれる人がどこかにいることを考えると、その翻訳自体がすでに立派なOSS活動だとおっしゃる方もいます。


OSSの翻訳をしてみるのも一つの貢献につながりますし、何より自分の勉強にもなりますので、みなさんもちょっとしたきっかけや機会をみつけたら迷わず、ぜひ試してみてください。

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